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12月

 ついに12月。冬。2024年の最後の月。

 先日、デパートでクリスマスケーキのカタログを見つけた。

 中の写真はどれもこれもが美しい。ケーキというよりは、作品。(もちろん作品には違いないのだけれど、食べるもの、という感じがしない。)

 個人的な事情からお菓子を絶って、多分3年にはなると思う。でも、さすがにこの時期、

「あー、美味しそう」

胸がときめく。真っ赤なイチゴと、ふわふわの白い生クリーム。そして、柔らかなスポンジのクリーム色!脳内に甘美な記憶が蘇る。

 

 一切のお菓子を諦めてから、数々の誘惑を払いのけてきた。しかし、意外なほど、気持ちは楽になった。

これを食べたらカロリーはいかほどか、とか、食べ過ぎて暗い自己嫌悪に陥ることもない。そして何より、あまりにも種類豊富なスイーツを前に、あれか、これか、と悩む必要がない。これが思いの外、快感だった。

 食べないと決めた以上、もう迷う必要がないのだ。

 選択肢がないことが、人を解放することもあるのだなぁ、と新鮮な驚きだった。

 

 日々の生活の中で、大小を問わず、あれか、これかを迷うことは少なくない。私は、カタログの中の美しいケーキを眺めながら、作品としてただ鑑賞している自分に、安堵していた。

 今年1年、私は何かにつけて、迷う時間が多かった。だから来年は、もうあまり迷わずにいたい。

 ケーキのカタログを閉じならが、ふとそんなことを考えていた。